モーガン・スパーロックの30デイズ (原題:30days)

アメリカ社会にメス

スーパーサイズミーのモーガン・スパーロックが、自身を含め別の人の生活に30日間浸るというもの。
普段の自分と違う生活が、彼らの何を変化させるのかを映していく。
アホなコメディショウではなく、多くを学ぶ意外と真面目なリアリティショウ。

制作国: us.gifアメリカ
放送時間: 45分
ジャンル: ドキュメンタリー
DVD発売: シーズン1~3
初放送: FX 2005~2008
初放送(JP): WOWOW 2006~2009

総合評価:☆☆☆☆
社会派度:☆☆☆☆
万人ウケ度:☆☆


Morgan Spurlockの代表作であり、このShowと同じコンセプトのSupersize Me!

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スーパー・サイズ・ミーはお馬鹿映画か!?

みなさんはモーガン・スパーロックのスーパー・サイズ・ミー (Super Size Me)というドキュメンタリー映画をご存じでしょうか。日本ではたぶん2007年に公開されたもので、モーガン・スパーロックという変わり者が、30日間マクドナルドの製品のみを飲食し、それが生活にどういった影響を与えるか体現するといういかにもアホな企画。

結果は想像以上のもので、気持ちの悪いぶよぶよのおなかを作るだけでなく、内臓器官や精神にまでダメージを与え、その危険性を示しました。残念ながらオスカーのドキュメンタリー部門では受賞を獲り逃しました・・・。マクドナルドの圧力があったりして・・・。

ある部分だけを切り取ると死ぬほどアホで笑える内容ではあるのですが、ここまで極端にやらなくても、いかにファーストフードと言った物が人体に悪影響を及ぼすかがわかり、普段の自身の食生活を振り返って戒めることもできるわけです。

まあ、ちょっと極端すぎて、こういう理論の構築がよいかどうかというと、首をかしげますけどね。何でも度が過ぎると良くないのは当然のことなので・・・。

新たな30日間の挑戦!!

モーガン・スパーロックはこの30日間の中で、まるで自分が自分でない別人になったような気分になったらしく、このように普段の自分とは違う生活をしている他人の生活を30日間体験してもらおう!というのがこのショウのコンセプトです。

同じネタである食べ物ではなく、社会問題を取り上げ、それを実践してもらうというものです。批判的な人を、その批判の対象が溢れる世界にどっぷり漬かってもらうというパターンが多いです。

第1話では、モーガン・スパーロック自身が最低賃金での生活をガールフレンド(今は結婚して妻)アレクサンドラ・ジェイミーソンと体験するもの。もちろん一つの仕事ではやっていけるわけもなく、2人して複数の仕事を持ち、家計のやりくりに挑戦します。彼はその他のエピソードでも、ホストとして登場します。

このほかには、ステロイドを使用したアンチ・エイジング。すなわち若返り・・・に挑戦。これは太ってしまったお父さんが医学的には効果があるといわれる方法でチャレンジします。もちろん精子が極端に減るといった副作用も承知の上で・・・。

大変興味深かったのが、敬虔なクリスチャンがイスラム教徒との生活に浸るというもの。アメリカでのイスラム教のイメージは、間違った神を崇拝するテロリスト・・・。まあ、それは9.11とオサマ・ビン・ラディン、アルカイダのイメージでしかないわけですが、彼らに大して良いイメージというのは全くないわけです。

われわれにはそれがいかなることか理解しにくいですが、田舎の敬虔なクリスチャンにとっては地球の正反対に行くようなもの(いや、別の惑星に行くようなものかも)で、イエス・キリスト以外を神として崇め、お祈りをするというのは、わたしのようなほとんど無宗教に近い人間とは全く違う感覚があるということです。

同じように、敬虔なクリスチャンがゲイの街サンフランシスコに送られ、ゲイで溢れる街で生活するというのも面白いです。特に田舎の方では、ゲイは聖書に反するとか言って、かなり強烈にバッシングし、社会の敵として見ているわけで、神の前ではみな平等というのはどこへ行ったのかと突っ込みたくなります。

その他は、都会で生活をする2人が、超エコな生活を体験するものと、健康的な生活をする母親が、大学生の娘のように、毎日酒をガンガン飲みまくるという無謀なものがシーズン1で挑戦されたものです。

シーズン2では、
・ボランティアの不法移民パトロール員を不法滞在中の家族の家に。
・アウトソーシングのためクビになったプログラマーをインドに送りこむ。
・無神論者を敬虔なクリスチャンの家に。
・ストレス社会に生きるセールスマンが、ニュー・エイジな世界(いわゆるスピリチュアル系とか、東洋の伝統的なものとか)に浸る。
・妊娠中絶賛成で中絶経験のある女性を、中絶反対のコミュニティに。
・モーガン・スパーロック自身が30日間、監獄で生活する。

これは超社会派番組なのだが・・・

共通のテーマとして、アメリカ社会の問題点にスポットを当てている点で、それがどう考えても非合理な社会の闇の部分であったり、ある一部分の人にとっては当然のことであったりするわけです。30日間挑戦!というと、なんだかアホな娯楽番組のようですが、実際は自由な国アメリカの社会に潜む病巣を取り扱った社会派番組なわけです。

特に宗教が絡む事項に関して言えば、アメリカ国民は、いかに相互理解がないかということをまざまざと見せつけられるわけで、そういった差別や偏見が、この時代においても堂々と存在することがはっきりとわかります。

まあ、はるか昔からそういうものを抱え続けて現代に至るのがアメリカという国なのかなと思うと、かなり残念であり、歴史を見てみるとそういう国であるというのは一貫していると言えるようです。

そういったアメリカという国の色々な面が見られるという点で、非常に興味深いショウです。なんかWOWOWで放映されたらしいですが、誰か観たというのも聞いたことないですね・・・。残念です。すごく面白いのに・・・。やはりスーパー・サイズ・ミーと同一視されてしまうってのがマイナスなんでしょうね。そういうショウじゃないのに・・・。

仕方がない。いわゆる体制派からすれば、危険な思想の番組ですから・・・。

ドキュメンタリー的視点

上にも散々書きましたとおり、モーガン・スパーロック自身は超真面目に取り組んでいますが、アメリカでも日本でもコメディアン扱いです。彼も取っつきやすさを考えて、おかしな設定を選択していますが、内容はごくごく真面目です。

コメディ的視点であれば、面白い面白くないで話は終わりです。評価としては、時間をかけてる割に今ひとつ面白くないといったところでしょう。

テーマの選び方というか、題材に問題があります。アメリカ社会の制度や、文化として当然あるべきとされるもの、触れにくい物に対して、えぐり出すように突撃していきます。こういった試みが、大企業や組織、ひいてはアメリカ政府に不快感を与えているのです。

そういった意味ではスーパー・サイズ・ミーは彼にとって大きな痛手となりました。世間はこれを真面目にうけとらず、おバカコメディアンのウケ狙い映画として紹介しました。これ以降、彼が何をやろうとも、「あのおバカ企画、スーパー・サイズ・ミーのモーガン・スパーロック」として紹介されるようになりました。

この30デイズも同様です。全世界で、「モーガン・スパーロックの2番煎じテレビ番組」としてしか扱われていません。非常に残念ですが、これが現実です。マイケル・ムーアにはなれませんでした。

直球評価

・社会派向け。
・でも、そんな人たちはこれを観ようともしない。
・コメディを期待して観るとがっかり。
・宗教がらみは面白い。
・アメリカ社会をある程度理解していないと意味がわからない。
・クリスチャンは観ない方がいいかも。
・モーガン・スパーロックの他の作品を観たい。


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