עבודה ערבית‎(ヘブライ語原題) شغل عَرَب(アラビア語原題) (米題:Arab Labor)

ユダヤ人になりたい!?

パレスチナ人のイスラエル市民であるアムジャッドはジャーナリスト。
アラブ人だが、ユダヤ人社会に上手く溶け込みたいと常に考えている。
しかしながら、現実にはよくわからない、見えない壁に阻まれているような気がしてならない。

ヘブライ語読みは「アボダ・アラビータ」。
英語タイトルの読みは「アラブ・レイバー」で、意味はアラビア人労働者といったところ。

制作国: il.gifイスラエル
放映時間:25分
ジャンル:コメディ
DVD発売:シーズン1(US)
初放映:Keshet Channel 2 2007
初放映(JP):日本未放映
シーズン1を全部観たところ。

総合評価:☆☆☆☆☆
教養度:☆☆☆☆
爆笑度:☆☆


- スポンサードリンク -

イスラエルには、神が我々に与えた土地として住まうユダヤ人と、古くからその土地に住むパレスチナ人、この2つの異なる人種が大半を占めています。
イスラエル社会では融和しているように見えますが、実際は様々な壁があります。

念のため書いておきますが、ユダヤ人の宗教はユダヤ教と呼ばれる旧約聖書を聖書としたもの。パレスチナ人はイスラム教で、最新の聖書と呼ばれるコーランの教義に従っています。

アムジャッド (as Norman Issa)は、ジャーナリストとしてイスラエル社会で働いています。パレスチナ人の集まる村に、妻、娘と暮らしています。両親はすぐ隣に住んでいます。
仕事では、特別な待遇をされることは全くなく、慎ましく生活していますが、自分がユダヤ人出ないということが彼の悩みの種です。

というのも、パレスチナ人はパレスチナ人の集落のような場所に住んでいて、境界線には警備兵が常に出入りの検査をしています。
また、それぞれの民族はそれぞれの文化に対して高い誇りを持っているため、現実は融和という言葉ほど溶け込んではいないのです。

さておき、妻ブシュラ (as Clara Khoury)が妊娠していることが分かり、家族は盛り上がります。

アムジャッドと共に取材に同行するのは、カメラマンのメイール (as Mariano Idelman)。彼はユダヤ人ですので、ヘブライ語(ユダヤ人の言語で、公用語の一つ)しか話せません。あ、英語も話せるか。

アムジャッドの一家は、全員バイリンガルで、アラビア語とヘブライ語、どちらも話せます。娘のマヤ (as Fatma Yihye)はまだのようです?
基本的に家や村ではアラビア語、村の外ではヘブライ語で話します。
どっちがどっちかわからないのですが、どうやらガハッとかグハッとか濁る方がヘブライ語のようです。

基本的には、アムジャッドが、勘違いや先読みのしすぎなどで、トラブルを次々と起こします。アムジャッドの父親イスマエール (as Salim Dau)もお笑い要員の一人です。
周囲はアブ・アムジャッドと呼びますが、これはアムジャッドの父(アブ)という意味です。お母さんはウンム・アムジャッドと呼ばれています。

イスマエールは、怒ると靴を持ってアムジャッドを追い回し、靴を投げつけます。

メイールは、パレスチナ人で、法律家のエイマール (as Mira Awad)と恋に落ち、常に難しい選択を迫られることになります。

このラインも面白いです。価値観の違いがストレートに出ています。それにしても、メイールはダメ男だな・・・。まあ、でも異教徒同士の恋愛事情は想像以上に複雑なのです。

アムジャッドはちょっとかわいそうな立場のようにも感じます。が、笑い自体は明るいので、悲壮感はありません。Curb Your Enthusiasmのラリーや、The Newsroomのジョージみたいな立場です。

オフビート気味なので、爆笑するというよりは、にんまりとかにやにやしながら観る番組です。

イスラエル社会的視点

イスラエルでは、主人公がアラビア語で喋り、ヘブライ語の字幕が付くことで、大論争となったようです。
ユダヤ人にしてみれば、自分たちの国の、自分たちのチャンネルの、しかもゴールデンタイムの番組に、アラビア語が主に使われ、ヘブライ語の字幕が付くことに不満を持ったのでしょう。

実際のイスラエルの中はこういった感じです。以前テレビニュースで、パレスチナ人のサッカーチームが、アウェイで本当にひどい罵声を浴びせられるという場面を見ました。

番組の中でも、ユダヤ人とパレスチナ人の確執は少なからず見ることが出来ますが、現実はもっと厳しいのではないかと思います。

ところで、わたしがこのショウに出会ったのは、アメリカ盤のDVDを購入したから(=英語字幕で観た)なのですが、アメリカでは一体誰向けに放映されたのか不思議です。
アメリカのユダヤ人向け?アラブ人向け?それともイスラエルは意外と融和社会ですよ~と一般人にアピールするため?

狙いはともかく、Link TVという、アルジャジーラ英語版を放映しているテレビ局のチャンネルで放映されているようです。

このショウのクリエイター、サイード・カシュア自身が、イスラエルに生まれたパレスチナ人のジャーナリストで、彼自身の経験や考え方が基になっているようです。日本語版はありませんが、本もいくつか出版しています。

そういえば、スバルとか三菱とかイスズとか、日本車いっぱいでした。あと、たばこ吸ってる人多いです。

直球評価

・素晴らしい!面白い!続きを観たい!
・アラビア語とヘブライ語のどっちを話しているかわからないのが難・・・。
・現実はもっと壁があると思う。
・それを皮肉っぽくではなく、面白く描いている。
・イスラエル社会の現実の一部を知ることが出来て良い。
・全体の作りは良い。
・結構知的な笑い。
・イスラエルについての基礎知識は必要。
・ユダヤ教とイスラム教についても多少の知識は必要。
・メイールはダメ男だが、応援してしまう。
・アメリカに憧れる日本人よりははるかに複雑。


- スポンサードリンク -