デッド・ライク・ミー 死神の新たな仕事 (原題:Dead Like Me)

今日から死神に・・・

とにかく皮肉っぽく世の中を生きる18歳のジョージア。
ある日宇宙から落ちてきたロシアの人工衛星ミュールの便器のふたが激突し、その短い生涯を閉じた。
その死の途端、死神としてリクルートされる。
そして、死神仲間たちと仕事に追われる毎日が始まってしまった・・・。

制作国: ca.gifカナダ us.gifアメリカ
放送時間: 42分
ジャンル: ファンタジー
DVD発売: コンプリートセット (US)
初放送: Showtime 2003~2004
初放送(JP): 80分版で放送?

スペシャルも含め、全部観ました。
DVDバラで全部持っています。

総合評価:☆☆☆☆
世界観:☆☆☆
ドラマ性:☆☆☆☆

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全くといっていいほど生きがいを見出せない、18歳のジョージア・ラス (as Ellen Muth)、通称ジョージは、天空から降ってきた、ロシアの人工衛星ミュールの便器のフタが命中してしまい、あっさりとその生涯に幕を閉じます。

のっけから死が降り注ぐわけですが、死はあくまで人生の一つの出来事であり、いつかはやって来る運命であり、あっけないものである。といった感じに、多少ひねった視点を加えて死を描いていきます。

あっさりと死んだジョージは、天国にも地獄にも行かず、前任者の昇進で空席になった死神(グリム・リーパー)の職に就くこととなります。

死神の基本的なシステムとしては、ボスであるルーブ・ソファ (as Mandy Patinkin)から指令が下ります。死亡予定の人の名前とETD (Estimated Time of Death)と呼ばれる死亡予定時刻、場所、あとは関連情報がポストイットで配られます。

名前がイニシャルだけだったりとか、時間以外は不完全な情報であることも多いです。そして魂と肉体を分けるデスハンド(さらりと触れられると、魂と肉体が切り離される)で死へと誘います。これが死神たちのお仕事です。

彼らは「外的死因」担当部門なので、事故などであっさり死んでしまう人担当です。少し笑ってしまうような死に方で、本当にあっさり死んでしまいます。そういった事故は、グレイヴリンという死神たちにしか見えない小鬼のような存在のいたずらに起因するものです。

そういった死を扱う仕事を通して、人間と死という避けられない運命を色々な角度から描写していきます。

ジョージと家族との関係も見所です。

ジョージが死んで、初めて彼女に対する思いを少しずつ漏らすように見せる家族とジョージの心境の描写は、ありがちとは言えどなかなかうまく描かれています。

母親のジョーイ (as Cynthia Stevenson)と夫クランシー (as Greg Kean)は、完全に冷めた関係です。大学教授のクランシーが教え子と関係を持ったことが原因です。クランシーはそもそも家庭にはあまり興味のない不在の夫です。

ジョーイは生前は釈然としないジョージアに強く当たっていました。レジーに対してもそんな感じで、決して良い母親ではありません。ジョージの死は、そんな彼女の心にはぽっかりと大きな穴を開けてしまいました。

妹のレジー (as Britt McKillip)は、生前のジョージから無視されていた存在です。にもかかわらず、ジョージを慕っていたようで、レジーは、今もジョージが幽霊となって辺りをさまよっていると考えています。

姉との永遠の別れを上手く受け容れられず、便器のフタを盗んで集めたり、鳥の死体を集めたりと奇妙な行動を繰り返し、母親ジョーイを困らせます。そんなレジーをジョージは気にかけます。

レジーの奇行に頭を悩ませるジョーイは、やはり厳しく当たってしまいます。レジーは生前のジョージ以上に反抗的で扱いづらくなってしまいます。そこには複雑な心境あってのことなのですが、ジョーイには何とも理解しがたいのです。

母親との失われていた関係をなんとかしたいジョージですが、もちろんどうすることもできません。

ジョージは、生きている人間としてこの世を歩き回ることが出来ます。しかし、死神以外の人からは、ジョージアではなく、他の人間ミリー・ハーガン (as Laura Boddington)という別人の姿に見えます。

もちろん家族との接触というか、正体を教えることは禁じられています。接触しても、見た目は別人なので気付くはずはありませんが・・・。

ジョージアは、ミリー・ハーガンとして、派遣会社ハッピータイムで働くこととなります。お腹がすいてしまうので、食費は稼がないといけないのです。皮肉なことに、今までまともに働かなかったジョージは、死神とパートタイムの、2つの仕事を持つことになるのです。おまけに今まで母親に頼っていた洗濯など家の事も自分でやることになります。

また、人付き合いが嫌いでしたが、死神となってからは、ハッピータイムの同僚たちとは何とかやっていくために、コミュニケーションを取るようになります。本当に皮肉なものです。

主演は決して美人とはいえないエレン・マスですが、演技は素晴らしいです。びびりました。主人公のジョージは、けったくその悪い、やる気のない、非常に斜に構えた輩ですが、本当にうまく演じています。

主人公が美人だったらDVDを買って観ようと決めていたのですが、彼女のあのけったいな顔に惹かれて買いました。本当に素晴らしいです!

日本ではWOWOWで80分版で放映されたそうです。色々と編集して80分にまとめたそうです。ウケが悪かったのか、それっきりだそうです。まあ、ウケないだろうな・・・。どうまとめたかわかりませんが、あまりにも無茶でしょうに・・・。

普通に放映される日が来て欲しいものです。

第二の人生的視点

まともに人間として人生を楽しめなかったジョージアの第二の人生を描いていると言えます。

よくあるパターンですが、長女として誕生し、両親に大変かわいがられて育ちます。しかし、妹レジーの誕生により、ジョージは家族のプリンセスの座から引きずり下ろされます。それ以来、ジョージはレジーを無視し始め、周囲への感心も失います。

これが原因で、ジョージアは人生そのものの意義を失ってしまいます。何を見ても興味を示さず、人付き合いを避け、常に皮肉な態度で生きるようになってしまいます。何も解決しないまま、不幸にも人生を終えます。

死神となって、変化する自分の家族を見つめるなかで、彼女は自分の存在意義を、無視し続けた妹によって気付かされます。生前、何もしてあげられなかった妹に、間接的にふれあうようになります。そして、母親に対しても、かつて素直になれなかった自分の態度を、レジーを通して示そうとします。

また、死神となっても生活費を稼がなくてはならないため、初めて自分が生きるために働くようになります。寝床こそ、死神仲間のメイソン (as Callum Blue)の部屋に転がり込みますが、食費を稼いだり、洗濯や掃除などの家事は自分でやらなくてはなりません。

就職もし、望まないながらも、何とか職場の同僚達とうまくやっていかねばなりません。生きていた時以上に、生きていくことの難しさを感じ、人とのふれあいの大切さに気付かされます。

死神としての仕事から、死や人生についても学ぶようになります。色々見所はありますが、わたしとしてはやはり家族との関わり合いが一番です。

クリエイターのブライアン・フュラーは、WonderfallやPushing Daisiesなど、人生や死をテーマとした作品を作っていますが、このデッド・ライク・ミーは見事にそれを表現していると思います。2シーズン作り、スペシャルまで放映していますが、1シーズンだけでも随分と完成されています。

彼は今、テレビ版のハンニバルで成功していますね!

直球評価

・死をコミカルに扱ってはいるものの、笑えるほどではない。
・何と言っても家族とのふれあいを描いている。
・その他、仲間や職場の同僚との人付き合いも描いている。
・毎回の死神の仕事とそれらを組み合わせてる。
・調和が見事。
・エレン・マスの演技は素晴らしい。
・とくにあのひねくれた表情が。
・しんみり楽しむショウ。
・世界観は受け容れるしかない・・・。

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