デクスター ~警察官は殺人鬼 (原題:DEXTER)

狂気と正義の狭間で・・・

マイアミ警察の有能な科学捜査の専門家で,血痕分析官として働くデクスター。
彼のもう一つの顔は、法から逃れる邪悪な輩を処刑すること。
ある日彼、完全血を抜かれた芸術的とも言える死体に遭遇する。
そして、"Ice Track Killer"と呼ばれる彼に引き込まれていく・・・。

制作国: us.gifアメリカ
放送時間: 50分
ジャンル: 犯罪
DVD発売: シーズン1~8 (US,JP)
初放送: Showtime 2006~2013 全8シーズン
初放送(JP): FOX Crime 2007~

総合評価:☆☆☆☆
グロテスク度:☆☆☆☆★
構成美:☆☆☆☆☆


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最近、過激さを売りにしたショウで、どんどん注目を集めているShowtime。Sex、ドラッグそして暴力にまみれたショウを次々と放映しています。ブラザーフッド、Weeds、カリフォルニケーション、Lの世界などです。これらのラインナップから、それは否定できないでしょう。そしてこのデクスター。

デクスター・モーガン (as Michael C. Hall)は、マイアミ警察の血痕分析官として、その有能さを発揮しています。養子となったモーガン家の父、ハリー (as James Remar)に厳しく育てられ、真面目に警察の一員として働く日々。

義理の妹にあたるデブラ (as Jennifer Carpenter)も同様に警察官です。デクスターを慕い、父のような警察官になりたいと、こちらも真面目に働いています。よく売春婦の格好をして潜入捜査しています。制服組の下っ端はつらいようで、かっこいい殺人課の刑事に憧れています。

デクスターにはもう一つの顔として、殺人の衝動を抑えられない精神異常者という側面があります。標的を定め、次々と証拠を残さず処刑していきます。ただ、その標的となるのは、法の目をすりぬけた凶悪な輩。社会のゴミのくせに、ひょうひょうと生きている彼らを許せないデクスターの正義感が処刑するわけです。

もっとも、見方を変えればデクスターも同じ種類の人間ですけどね。殺される彼らと・・・。

処刑はちょっと目も当てられないような残虐な方法です。生きてるのに切り刻んだりとか・・・。そんな中、彼はコレクションとして処刑した人の血を集めています。こういったところもちょっと異常・・・。

デクスターは子供の頃、動物を虐殺していたのを父ハリーに見つかってしまいます。彼の異常性、そして止めることのできない殺戮への衝動を理解したハリーは、デクスターを正しい方向に導くべく、その衝動を極悪人のみに差し向けるようにしたのです。そして、警察に見つからない手法を教わりました。手法だけでなく、人としての生き方などもハリーから学びました。

そういうフラッシュバックシーンがあり、どのようにしてデクスター今に至ったかが、少しずつわかるようになっています。非常に興味深いラインです。

デクスターは普段、どこからみても好青年です。仕事もできるし、人柄もよく人望も厚いです。現場の刑事、エンジェル・バティスタ (as David Zayas)とは、仲良くやっています。

孤高で口の悪い巡査部長のジェームス・ドゥークス (as Erik King)は、デクスターのことを何か匂うヤツと、直観が騒いでいるようで、いけ好かない怪しい輩として見ています。デクスターは、自分の悪の部分を見抜く希少な人間として、彼を評価しているようです。

殺人課のボスで、警部補のマリア・ラゲルタ (as Lauren Velez)は、デクスターに好意を持っています。反対に、デブラに対しては、生意気でどうやら好きになれないタイプのようです。

デクスターには、シングルマザーのガールフレンド、リタ・ベネット (as Julien Benz)がいます。2人の子供、アスター (as Christina Robinson)とコディ (as Daniel Goldman)にも非常に好かれています。

リタはデクスターと性的な関係への展開を望んでいますが、色々あってなかなか進まないのがちょっと面白いです。ひょっとしたら本能的にデクスターの異常性を感じ取っているのかもしれません・・・。

そんな彼の生活を変えたのが、ある殺人死体。完全に血を抜かれ、美しく切り刻まれた芸術的な死体に、デクスターは魅了されてしまいます。次々と殺人を行い、"Ice Track Killer"(冷凍車殺人鬼)と呼ばれる彼を、知らず知らずのうちに追いかけていきます。

そして、彼もデクスターを挑発するかのように接触を試みてきます。その死体処理の手法のように、時には大胆に。そして時には痕跡を残さず美しく・・・。

その近づき方は、科学では解明できないほどの神出鬼没でちょっと恐ろしいです・・・。デクスターは彼と接触できるのを楽しんでいるようです・・・。きっと同じサイドの人間、友人として。しかし、一見同業者の友好的なコミュニケーションに見えて、実際はそうでもないような気もします・・・。

妹のデブラは、この"Ice Track Killer"を追うことで、刑事への昇格を目指しています。彼の気持ちがわかるような気がするデクスターの協力を得て、犯人を猛追していきます。物凄い熱心で、これに賭けています。デクスターの協力もあってか、署内での評判を徐々に上げていきます。

実際に観るまでは、こういった非倫理的なショウが人々を暴力的な方向に走らせてしまう。なんとけしからんショウだ!!と思っていましたが、実際に観てみると180度考え方が変わります。表面だけ捉えるととんでもないショウですが、想像以上に奥が深いです。

かなり泥臭いショウと思いきや、ほえーんと明るいところや、ちょっとしたユーモアも織り交ぜてあって、真っ暗で恐いだけのショウではありません。オープニングシーケンスとかも、どこかあっけらかーんとしています。

そういう意味ではprofilerとはかなり違います。でも、不可解な"Ice Track Killer"の侵入と"Jack of All Trade"はダブりますね・・・。

デクスターはかなり人間っぽいというか、普通のお兄ちゃん。主演のマイケル・C・ホールがどちらかというと、暗より明の方が目立つ顔立ちなので、それもあってちょっと親しみがわいてしまいます。殺してるのも悪い奴らだから、いいかーみたいな・・・。

設定通りですが、彼からは底からわき上がるような恐怖を全く感じません。自身を"モンスター"と称していますが、人間味の方が強いです。暗いけど闇が深く感じらるといったこともなく、まったく恐くありません。

一方で、デブラを演じるジェニファー・カーペンターの、カメラに突っ込みそうな感じがいいです。父親ハリー役の演じるジェームス・リマーも雰囲気あります。この2人はいいですね。個人的にはエンジェル役のデイヴィッド・ザヤスも味があって好きです。ガールフレンドのリタを演じるジュリー・ベンズ。どことなく不安定な感じがよく出ています。

オープニングシーケンスはかなりいいです。蚊を潰したり、髭反ったり、朝ご飯を作って食べたりなんですけど、どことなく残虐さを連想させるあたりが・・・。素晴らしい!ちょっとニヤッとしてしまいますね、これには。

このショウ、原作小説がありまして、ジェフ・リンゼイの"Darkly Dreaming Dexter"が基になっているようです。シーズン2以降は、小説の内容とは少し離れていっているとのことです。

わたしはこのショウをかなり遠ざけていました。ちょっとプロットだけ聞くとどうにも受け容れられなくて・・・。観たことがない人の中に、同じように考えている方は多いと思います。また、女性受けは非常に悪いです。少なくともわたしの周囲では・・・。
一話一話、"Ice Track Killer"のラインと殺人課のライン、そしてデクスターの処刑、どれも非常に味があって良いのですけどねぇ。

テレビシリーズ的視点

わたしがこのショウを絶賛するのは、一つはテレビシリーズにしては珍しく、1シリーズで一つの話が完結するという点です。

小説ベースだから当たり前かもしれませんが、明らかにこの形を取っているのは、24くらいじゃないでしょうか。きっと他にもあるでしょうが、とにかくアメリカのテレビでは珍しい方です。

もっと言うなれば、あまり大きな謎を次に残しすぎない点です。上記の定義で考えると、デスパレートな妻たちも、シーズン毎に完結します。しかし、変なしこりがたくさん残ったまま次のシーズンを迎えます。

デクスターでは、この先の関係や、少しずつはがれ落ち、いつかはデクスターの正体がばれてしまうのではないかとか、段々と苦悩が増していく姿など、次へのワクワクだけが、良い感じで残されます。変に期待させすぎないところが、なお良いです。

こうした感じなので、いつ終わりを迎えても、それなりに綺麗に終わることが出来るような気がします。視聴率が急激に下がり、中途半端に終わりを迎えたショウは星の数ほどあります。また、だらだらとひたすら長く続いていったショウもあります。

このあまりにも展開が遅かったり、キリの悪いショウを何度も見せられ、アメリカのテレビシリーズに対して不信感を持っている方は非常に多いと思います。わたしはそれを非常に強く感じます。

このショウは、それを綺麗に解消しているのです。この点が、わたしがこのショウを高く評価する理由です。





直球評価

・ちょっとグロテスク。
・血がびゃーっと飛んだりする。
・その割にちょっと軽くて明るい。
・しかし、やはりドロッと暗いところがある。
・1シーズンで物語がまとまるので、非常に気持ちが良い。
・殺人が絡むので気持ちが良いとは言えない。
・しかしながら、十分面白い。
・かなり完成度が高く、万人ウケしないものの、賞賛に値する。

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