ハンニバル (原題:HANNIBAL)
レッド・ドラゴン以前のハンニバル・レクター
ハンニバル・レクターの映画および小説「レッド・ドラゴン」「羊たちの沈黙」「ハンニバル」。
連続殺人鬼として捕らえられるまでの彼の人生、彼の周囲の人々を描く。
ハンニバルを逮捕したウィル・グレアム、彼のボス、ジャック・クロフォードなど、他の作品でお馴染みのキャラクタも登場する。
ハンニバルの制御・支配がどこまで及び続けたのかが明らかになる。
制作国: アメリカ
放送時間: 43分
ジャンル: 犯罪捜査、犯罪
DVD発売: シーズン 1
初放送: NBC 2013~
初放送(JP): スターチャンネル 2014〜
総合評価: 7.6/10
暗黒度: 6.4/10
残虐度: 6.0/10
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ハンニバル予備知識
このテレビシリーズは、ある程度の予備知識が必要となります。手っ取り早いのは、映画もしくは小説の3部作をご覧になることですが・・・。
まず、主役である精神科医ハンニバル・レクター (Dr. Hannibal Lecter as Mads Mikkelsen)は、連続殺人鬼であり、死体の臓器を切除して料理に使うという、食人鬼(英語ではCannibal)です。
映画ではアンソニー・ホプキンスが演じて、彼のイメージを見事に作り上げました。その前にブライアン・コックスも演じています。羊よりも前(1986年)の映画で、邦題は「刑事グラハム/凍りついた欲望」で、DVDタイトルは「レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙」。
三部作では、彼が元精神科医であり、自身も連続殺人鬼で、同種の犯罪者の心理洞察力が極めて優れていることから、FBIのプロファイラー(犯罪心理分析官)たちが、彼に助言を求めにくるのです。
ハンニバルは最重要かつ凶悪犯罪者として、独房で厳しく監視され、行動も制限されています。自由は恐ろしく制限されています。
しかしながら、その状況に気が病むことなく、彼と接する人を介して、独房から人々の心を操り、彼らを意のままに支配しようとしています。独房にいながらも、未だに彼の支配力、そして人々を惹きつける魅力というのは衰えてはいないのです。
テレビシリーズでは、既に彼はいくつもの犯罪に手を染めていながらも、それを知る者は視聴者以外にいないという設定で物語が進行していきます。
テレビのハンニバル
外科医から精神科医に転身したハンニバル・レクター博士は、メリーランド州ボルチモアの自宅で開業しているセラピストです。よい家に住み、よい服を着、食にこだわったハイソサエティな生活をしています。
ウィル・グラハムは、FBIの心理捜査官として、FBIの学校内で教師として教鞭を振るっています。彼の類い希なる能力を聞きつけたFBIエージェントのジャック・クロフォードは、彼を現場へと引っ張り出します。
精神面での不安が大きいウィルをサポートするために、FBIで心理学コンサルタントをしているアラナ・ブルーム博士の紹介により、レクターをセラピストとしてつけることとなります。
ジャックが担当している犯罪は、猟奇的かつ連続的な、いわゆる精神異常者と思われる者の犯行で、その犯罪の手口は時として鮮やかであり、時として極めて残酷でもあります。
ウィルは特殊な能力を持っていて、その犯罪現場の観察を通して、自身が犯罪者と目線・思考・行動をシンクロすることができます。その能力は余りにも高く、状況を鮮明に再現してしまうのです。
それ故、彼は彼自身を見失い始めます。まるで自分が猟奇的な連続殺人犯ではないかと疑い始めてしまいます。
ハンニバルは、そんなウィルを心理的にサポートしています。彼の心の苦しみを聴き、適切なアドバイスを与えていきます。誰の目にも、100点満点のように思えるハンニバルのアドバイスですが、その裏側には彼の思惑が潜んでいます。
そのせいで、ウィルは徐々に精神を蝕まれていきます。ウィルはその能力で、次々と犯人逮捕に結びつけていきます。ジャックもそれを評価し、次々と新たな現場へと連れ出します。
それもウィルを疲弊させる一員ではありますが、ハンニバルはその状況を巧妙に利用し、ジャックとウィルの関係を、全く目に見えない形でいびつにねじ曲げていきます。
ハンニバルの隠れた異常性
ハンニバルはこの時点で、既に多くの人を殺し、その内臓を調理して家を訪れる人に提供しています。
とにかく彼には秘密があり、今のところ誰にも少しも疑われることも無く、医者としても、一人の人間としても周囲から非常に高く評価されています。さらに、美食家であり、料理人としても誰からも尊敬を集めています。
シリーズでは、チェサピーク・リッパー (Chesapeake Ripper)と呼ばれる連続殺人鬼を追うことになります。全く痕跡を残さず、見事に臓器を取り出し、まるで芸術作品のように死体を飾ります。
その模倣犯とも言える手口での、別人のものと思われる犯行が次々と発生します。それはまるで、模倣犯達がリッパー(ハンニバル)に自分の作品を見て欲しいがためにやっているようです。
精神異常者(サイコパス)たちは、同類達の何かしらがあるのか、ハンニバルとの繋がりを感じるようで、それはハンニバルも同じようです。そして、ウィルもその世界へと引きずり込まれていきます。
先行き不安・・・
プロデューサー兼ライターのブライアン・フュラーは、Wonderfalls、Dead Like Me、Pushing Daisiesといった、ちょっと特殊な能力や死について扱った作品を手掛けてきました。Wonderfallsは4話で、他の2つは2シーズンで終わってしまいました・・・。
これらのショウのキャストたち、たくさん登場しています。
とはいえ、彼の作品は批評家や一部のファンには非常に根強い人気があり、それはカルト的とも言えます。ただ、大衆受けはせず、今回もその点が心配されます。
キャラクターとしてハンニバルは、全米では名の知れた連続殺人犯で、知名度は十分ですが、金曜日のいわゆる誰も見ない時間枠で、しかも暗めな内容のため、視聴率は全く振るっていません。
しかしながら、hulu.comではベストショウに選ばれるなど、その底力を発揮しています。
ハンニバルシリーズのポジション
スクリプトは、ファンのために非常に工夫されているようで、三部作で出てきたキャラクターや、彼らの台詞の使い回しもしているようなので、小説や映画をもう一度見直すと、より楽しめるかと思います。
これは制作者であるブライアン・フュラーのオタク度が存分に反映されています。
わたしは、レッド・ドラゴンの1/4くらいまでで挫折しましたけど・・・。
フュラー曰く、シーズン3でハンニバル逮捕、シーズン4でレッド・ドラゴン、シーズン5で羊たちの沈黙、6でハンニバル・・・という青写真を描いているとのこと。毎年ギリギリの単年契約っぽいですけどね・・・。
日本ではスターチャンネルでシーズン1が放映され、この調子でいけば、終了するまで毎年やってくれそうです。
あと、各話のタイトルが、シーズン1はフランス料理、シーズン2は日本料理の用語を使っています。どうでもいいけど、変なこだわりあるみたいで面白いですね。
ミケルセン vs. ホプキンス
アンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターは、強烈な印象を残したと思います。わたしも今でもレクターというと、あの顔が思い浮かびます。
一方で、今回のマッツ・ミケルセンですが、そんなアンソニー・ホプキンスの影を全く思い出させることなく、フュラーの描く、そして彼が感じるままのレクター像を演じきっています。
非常にお洒落で洗練されたレクター博士。オールドファンは気にくわないかもしれませんが、わたしはこれでいいと思います。変な物まねとか見たくないし・・・。
このショウが好きなら
同じ猟奇的殺人のプロファイラーということで、アリー・ウォーカー主演のプロファイラーがあります。
そういえば主演のアリー・ウォーカーが演じるサマンサ・ウォーター博士もウィル・グラハムと同じように、犯罪が起こった現場の映像が脳内に描けます。アリー・ウォーカー曰く、あれは特殊能力ではなく、プロファイラーなら誰しもが持っているものだと解説していました。
ハンニバルでは、誰しもが持っていて、成長と共に失われるべき共感能力が、不遇な幼少期を過ごしたウィルの中では失われずに残っていると説明されています。
たぶん、WOWOWでやっているクリミナル・マインドとか、Law & Order クリミナル・インテントも犯罪者の深い心理を描いているかと思います。
直球評価
・元々のキャラクタ性を十分に活かしている。・小説か映画は見ておいた方がよい。
・ハンニバルの狙いが見えてきてからが面白い。
・民放の番組なので、それほどグロテスクではない。
・そして暗すぎるわけではない。
・ハンニバルが人を操る(翻弄する)ところが最大の見所。
・色々な点で難しくて万人受けは絶対無理。
・ハンニバル世代ではない人には厳しいかな・・・。
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