ゾンビものといえば、ジョージ・A・ロメロのナイト・オブ・ザ・リビングデッド、ドーン・オブ・ザ・デッドをはじめとし、様々な映像作品が作られました。死者が蘇る。噛まれると感染してゾンビ化する。脳を破壊すると停止させられるなど、基本ルールは固まっています。

このドラマもそれに則っていて、様々なアレンジはありますが、ごく一般的なゾンビ物といえます。
近年では28週後などで用いられた、走るゾンビなどもありますが、このドラマのはそれほど早くありません。

警官のリックは捜査中に負傷し、入院をしていました。昏睡状態から目が覚めた時は、病室に一人取り残された状態。一度外に出ると、あたりは余りにも奇妙に変わり果てた人々ばかり。

家族を心配して何とか家に辿り着くも、家はもぬけの殻です。街はゾンビで溢れ、まるで世界の終わりのようになってしまっています。警察署で大量の武器を入手し、家族を探します。

妻のローリーと息子のカールは、リックの同僚のショーンの助けを得て、他の人々との一団のキャンプに合流しています。リックはそこで家族と再会し、一団のリーダーとなります。

このドラマでは、これまでのゾンビ映画などと同様、人間かそうでないかわからない存在を殺すということをしなければなりません。その葛藤や、かつて家族や仲間だった存在を殺さなければならない状況など、心の内を上手く描いています。

また、無政府状態で、これまでの常識が通用しない状況下で、何が正しいかという選択を常に迫られます。意見は分かれ、絶対的な正解はありませんが、リックはリーダーとして、その決断を迫られます。

それが集団内の意見の対立を生みますが、ある時は強権的、独裁的に決めなければなりません。その姿は決して格好良くなく、時としてイラッとしてしまいますが、現実（我々の社会においても）はそういうものでしょう。

リックはその重荷を背負い、精神的に参っていきます。誰一人として、精神的には健全でいられず、皆大きな闇を抱えています。

彼らはゾンビ化した人たちをウォーカーと呼びます。バイターと呼ぶ人たちもいます。少なくとも彼らはもはや人間ではないと考え、容赦なくとどめを刺します。こうした世界では必要な差別化でしょう。

世は変わり果て、良い人も悪い人も居ます。何とかみんなで生き延びようと考える人。略奪をしてでも、嘘を突き通してでも生き残ろうと考える人など様々です。まあ、この辺も特筆すべき点ではないです。

はっきり言って、特別な物は何もありません。それでも、こうした極限状態の中での心理状態を、様々なイベントを交えながら上手く描いています。ただただそれをやり続けていて、人の心を揺り動かすことが出来ているので、こうして続いているのでしょう。

あと、息子のカールの成長と、子供がどう感じ、どう生きていくのか、親子それぞれの立場から描いています。比較的長いスパンで描き続けます。

原作コミック

原作はロバート・カークマンという人のコミックで、こちらも日本語化され、好評です。値段は非常に高く、ぼったくり価格と言えます。また、絵は一人目も二人目も上手くなく、日本の漫画レベルからすると、到底およびません。残念です。

ドラマはこの漫画のストーリーをテレビドラマ脚本化して進めていますので、大まかな流れは同じです。漫画の方はテンポも良く、ストーリーも非常に面白いです。比較してしまうと、テレビは非常にだらっとしていて、展開が遅いと感じてしまいます。

漫画は印象に残るシーンがいくつもあります。弱い自分が生き残るための選択や、最悪の事態になった場合に何ができるのか、誰を救うのか。そして生きた人間同士にも関わらず、埋めようのない対立が生まれるなど、そういった内面的な描写は秀逸です。

英語版の漫画を買うなら、Compendiumの版がコストパフォーマンスが良いと思います。わたしはそれを買っています。日本語版は高い・・・。高すぎる・・・。殿様商売だ。

直球評価

・原作の世界観を見事に表現している。
・リック嫌いは多いと思うが、それはそれでよし。
・極限状態での心理描写が良く、それが他との大きな差。
・人間のモラルと家族愛がテーマ
・テレビシリーズの悪い点、展開の遅さを抱え、崩壊に向かっている。
・展開がドン亀すぎて、こっちがThe Watching Deadになる。
・演技イマイチな人が多め・・・。
・挿入歌のカントリーひどすぎてげんなり。いらない。