THE COMEBACK

復活の道は蛇といばら・・・

ヴァレリー・チェリッシュといえば10年ほど前にスマッシュヒットしたシチュエーションコメディに出演していた女優。
その彼女がついにネットワーク局のシトコムに復帰することに!!
その様子をリアリティーショウのカメラがつきまとう。
果たして彼女は華々しくカムバックできるのか?

制作国: us.gifアメリカ
放映時間:29分
ジャンル: コメディ
DVD発売: シーズン1 (US, CA)
初放送: HBO 2005 1シーズン 全13話

総合評価:☆☆☆☆
爆笑度:☆★
共感度:☆☆☆★


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また新たなるモキュメンタリー

ちなみに英語圏ではこうしたショウの形態をモキュメンタリー(Mocumentary)と呼びます。モック(Mock)、すなわち偽物(模造品)のドキュメンタリー(Documentary)というわけです。あちらさんの業界用語。

ヴァレリー・チェリッシュ (as Lisa Kudrow)といえば、人気シトコム "I'm it!"で人気を博し、TVガイドの表紙、ピープルズ・チョイス・アワード、そしてJay Leno Showなんかにも登場して一躍時の人。となったのはもう10年以上前。その後はちっともパッとせず、不遇の時期を過ごしたよう。

そんな彼女が再起をかけるのが、ネットワーク局の新しいシトコム"Room and Bored"。4人の若者たちが過ごすビーチハウスの所有者であるサッシーおばさんを演じることになります。

ヴァレリー不要・・・

ショウは若者たちが中心。水着の若者たちの恋愛模様やSexなんかをコミカルに描いているような感じです。サッシーはいわばその若者のまとめ役です。もしかして、いらない?

こうして奮闘するヴァレリーの様子を、アメリカではよくある、落ち目の有名人を追っかけるようなリアリティーショウのカメラが追いかけていきます。"The Comeback"は、このリアリティショウのタイトルなのです。

これ、それこそ「ジ・オズボーンズ」とか「Anna Nichole Show」みたいな感じで、容赦なくカメラが入っていくさまを面白く描いています。

リアリティーショウのプロデューサーのジェーン (as Laura Silverman)は、カメラを意識するなとか注文つけるし、関係者以外立ち入り禁止区域でも堂々と入ってきます。何がどう使えるかわからないので、とりあえずは撮影とばかりにとにかくなんでも撮りまくります。リアリティーショウのくせに、強引に撮り直しさせてたりするけど・・・。

ヴァレリーは、以前それなりに人気があっただけあって、ちょっと態度は大きいです。偉そうに脚本やプロデューサーに口出しするし、4人の若者が主役でおまけの叔母さんのくせに、シーンに絡もうとやたらしゃしゃり出ようとします。

このショウは自分があってこそ成り立つと考えています。プライドが高いのです。その出しゃばった行動に、もちろん制作側はうんざり・・・。特にプロデューサー兼脚本のポリー・G (as Lance Barber)はヴァレリーの事が気に食わないらしく、かなり邪険です。

ヴァレリーの周囲

ヴァレリーにはマーク (as Damian Young)という夫がいます。彼は普通の会社員なので、彼女の仕事、特にリアリティーショウのカメラにはさすがに困った様子です。

マークには前の妻との間の子、フランチェスカ (as Vanessa Marano)がいます。まだ12歳ですが、自由奔放に育っているようです。普段はマークの前妻ミミと暮らしていて、たまにマークに会いに来ます。

I'm it!時代からのヴァレリーのヘアスタイリスト兼アシスタントのミッキー (as Robert Michael Morris)は、どこからどうみてもゲイですが、本人は公表せずに隠しています。
ヴァレリーのカムバックには欠かせない人物で、常にヴァレリーと共に行動し、彼女を支えています。かわいいおじいちゃん。

主演の4人の若者からは、ヴァレリーはテレビの先輩としてそれなりに尊敬されています。ああいうスタジオシトコムでの独特な間の取り方や、観客との駆け引きも知っていますし、制作側の言うことを大人しく従うだけの彼らとは全く違って、ズバズバ意見を言ってのける姿が、「さすが!!」と映ります。

なかでもジュナ (as Malin Akerman)はヴァレリーの大ファン。I'm it!放映当時9歳だった彼女は、両親にお願いしてショウを見せてもらっていたそうです。彼女にとってヒーローだったヴァレリーと競演できるのは夢だそうで、ヴァレリーと一番仲が良く、一緒に行動することも多いです。

これは・・・やばい

フレンズでフィービーを演じていたリサ・クドロウを知る人がこのショウを観たなら、リサ・クドロウってどこに行ってもリサ・クドロウなんだと思うでしょう。フィービー・ブッフェイとノリがほとんど同じです。
まぁ、シトコムに毒された役者なので、それを狙っているわけです。

ショウはちょっと華麗なるカムバックの場とは言い難く、そのバックアッププランとして、同じネットワーク局によるリアリティーショウがあるようです。お互いの番組の相乗宣伝効果がありますしね。

そもそも彼女のアクのあるキャラクタは、制作側と相容れない感じはしますし、私生活もリアリティーショウのカメラのせいで、ちょっとギクシャクしています。

そんな環境ながらも、前向きというか、あまりマイナス面を感じずにヴァレリーは突き進みます。ヴァレリーは台詞や動作に力を持たせるのはうまいので、やはりただ者ではないようです。それが吉と出るか凶と出るかがこのショウの見所です。

リサ・クドロウのアクのある演技がちょっと受け入れ難い・・・。ですが、内容自体は観やすく、ヴァレリーを応援したくなります。

ヴァレリーと周囲との関係や、今回の新シトコムの命運といったストーリー展開が結構気になります。





業界の内情としては面白い

恐ろしいテレビ業界の内側を、シトコム、リアリティーショウ、そして女優といった様々な視点から切り裂いているところが好ましく感じます。
やはりきらびやかに見えて、実はドロドロとした部分を堂々と見せてくれるところに共感を覚えるんでしょうね。

「sex and the city」のプロデューサーとして一躍その名を轟かせたマイケル・パトリック・キング。只者ではないということですね。

でも、シーズン2にはカムバック出来なかったということで・・・。

現実的視点

意外とテレビや映画業界の内幕を描くショウというのは少ないです。要するにとてもじゃないけど映せないというのが本当のところなのでしょう。我々はきらびやかな一面しか見えませんが、このショウを観ると、やはり物作りは大変!というのがよくわかります。

人気シトコムというと、非常に華やかで、家族のように結束したスタッフとキャストをイメージしてしまいます。その元人気コメディショウ出身という点で共通する2人がクリエイターです。

リサ・クドロウは言わずと知れた人気シトコム、フレンズのスター。マイケル・パトリック・キングはsex and the cityの名プロデューサーです。この2人が描く世界が作り物であるはずはないでしょう。
そう考えてこのショウを観ると、ちょっとぞぞっとします。そして非常に興味深いです。

あるところは少し大げさに、そして面白くなるように脚色をしているでしょうが、それ以外の点はほぼ現実に即していると言ってよいと思います。わたしはそう信じています。

直球評価

・このショウに何を期待するかがポイント。
・シトコムの裏側、リアリティショウの裏側が観られる。
・コメディ的な笑いではなく、別の種類の笑い。面白さ。
・ヴァレリーを応援したくなる。
・ポリー・Gが憎くなる。(ランス・バーバー好演!)
・リサ・クドロウが演じているのかどうかさっぱりわからないほど好演!
・シーズン1で終わったが、やりつくしたと思う。
・フレンズファンが期待して観ると見事に裏切られる。

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