ビッグ・ラブ (原題:BIG LOVE)

3人の妻、7人の子供、1つの家庭

ユタ州ソルトレイクシティでホームセンターを経営するビル・ヘンリクソンは3人の妻と7人の子供を持つ多重婚者。
もちろん法律では許されていない。
妻同士は互いに距離を保ち、仲良く暮らしている。しかし社会人としてはそれを秘密にしておかなくてはならない。
内にも外にも気を遣うそんな彼の複雑な生活を描く。

制作国: us.gifアメリカ
放送時間: 56分
ジャンル: ドラマ
DVD発売: シーズン1~5 (US)
初放送: HBO 2006~2011
初放送(JP): Jcom ビデオオンデマンド?

総合評価:☆☆☆★
どろどろ度:☆☆☆☆
共感度:☆☆


- スポンサードリンク -

多重婚という不思議な文化

日本ではもとより、アメリカでも多重婚は認められていません。しかし、モルモン教の一派、ファンダメンタルモルモンでは、教義で認められているとのこと。

ビル・ヘンリクソン (as Bill Paxton)はソルトレイクシティで「ホームプラス」なるホームセンターを経営し、それなりの成功を手にしている実業家。ビジネスの方はなかなかのやり手のようで、どんどん拡大しているようです。そんな彼は3人の妻を持ち、7人の子供に囲まれて暮らしているポリガミスト。多重婚者です。

彼の最初の妻はバーブ(as Janne Tripplehorn)。教師をしています。
彼女との子供は、高校生のベン (as Douglas Smith)、同じく高校生のサラ (as Amanda Seyfried)と、小学生のタンシー (as Jolean Wejbe)の3人がいます。なんとなくですが、ビルにとっては3人の妻の中でバーブが一番のような気がします。

2番目の妻はニコレット・グラント (as Chloë Sevigny)、通称ニッキ。彼女との子供は、ウェイン (as Tina Majorino)とレイモンド (as Garrett/Spencer Gray)の2人の息子がいます。

3番目の妻は一番若いマージーン・ヘフマン (as Ginnifer Goodwin)。23歳です。アーロンとレスターという2人の息子がいます。若さゆえ、3人の中で一番子供っぽいです。

ニッキもマージーンも、ビルの子供の面倒を見ていてそのうちに・・・という展開のようです。これ、有効な手段なのかしら・・・?

3人はお互い友人のような関係です。夜の方は、ローテーションが組まれているようで、毎日交代交代みたいです。40過ぎのオヤジに毎日はきついだろうと思ったら、毎晩のようにバイアグラを服用しているようで・・・。って、朝も飲んでる!!飲み過ぎなんじゃない?

お互いに嫉妬心を持つこともありますし、2人でもう1人の話をひそひそとしたりもあります。仲直りするときは、3人で手をつないでという決まりがあるみたいです。

秘密の関係

ソルトレイクシティがどれだけ保守的な地域か知りませんが、かなり周りを気にしています。対外的にはビルとバーブが夫婦で、両隣に住む2人は、仲の良いシングルマザー家庭ということになっています。

多重婚というと、もちろん違法ですし、社会的には批判される立場ですが、宗教的なものもあり、それも恐れて3つの家族はあまり他の人たちとは親密に交流を持とうとしません。まあ、それが安全ですよね。

ビルは職場でもばれないようにうまく隠し続けています。ビルの近所で多重婚者がいるなどという噂が出る度にひやひやしています。いずれどこかでばれるんだろうけど、どこからばれるのか楽しみ!

多重婚文化の秘密の部落

ビルが多重婚者なのは、ジュニパークリークという場所が、ファンダメンタルモルモン教一派の人たちが暮らす地域であり、そういうのを許しているからです。彼の父親フランク・ハーロウ (as Bruce Dern)も5人の妻を持ち、ビルの母親ロイス・ヘンリクソン (as Grace Zabriskie)は2番目の妻です。

ここは外界との関わりを避けるように、独立した地域であり、彼らはそのコミュニティの中で生活をしています。ビルは14歳にしてジュニパークリークを飛び出しました。

そのせいがあってか、ビルとフランク、ロイスの関係は微妙なものです。外の世界で生活しているビルとジュニパークリークの関係もまた微妙です。

ビルにはジョーイ (as Shawn Doyle)という弟がいます。ビルとは非常に仲がよいです。今はジュニパークリークで妻ワンダ (as Melora Walters)と共に暮らしています。妹は謎の死を遂げたとか・・・。

やっかいなのが、ビルはジュニパークリークのボスであるローマン・グラント (as Harry Dean Stanton)とビジネス上でもめています。ホームプラスの3番目の店の利権とかで・・・。

このローマンは15人の妻を持っています。しかもニッキの父親です。しかも、15人目の妻ロンダ (as Daveigh Chase)はなんと14歳!!そして、息子のアルビー (as Matt Ross)を使って、ビルに様々な圧力をかけてきます。

男性からすれば、愛する女性が3人一緒に住んでいて、お互いが仲良くやっている。しかもビジネスもうまくいっていると聞くと、まるで夢のような生活のように思われます。
が、現実そう甘くいくわけではないよというのがよくわかります。

そんな難しさと、現実的問題、テレビドラマ的スパイス(子供も含め、それぞれが持つ悩みや周囲との複雑な関係)が混ざっていてなかなか面白いです。若者が楽しむというよりも、おっちゃんおばちゃんたちが秘かに楽しむといった内容ですかね。

メインテーマ曲はなんとThe Beach Boysの"God Only Knows"です。

日本人が観るにはちょっと現実離れした感がして、とっつきが悪いかと思います。しかしアメリカのユタ州では、現にファンダメンタルモルモンというモルモン教のとある一派が重婚を認めていて、そういう人たちが生活している地域が現実にあるとのことです。

ドラマ的にはマフィアのボスとその家族の「ソプラノズ」の主人公が多重婚者になったような感じ。
最近観直していますが、ドラマになる内容が盛りだくさんで面白いです!

文化的視点

シーズン1DVD発売時は、わたしの文化理解度も低かったため、どうにもとっつけませんでした。現代日本人的感覚からすると、重婚と聞くだけで随分ふしだらで非社会的なように感じます。

とはいえ、近代以前は公認のお妾さんなどいましたし、側室制度もありました。現代でも浮気や愛人など、制度的には認められていないものの、現実には複数の人と関係を持っているわけです。

テレビコマーシャルでも堂々と「イマカレ」「モトカレ」「ベツカレ」なんてやっていますから、重婚を理解する素地はあると言えるのではないでしょうか。

ちなみにイスラム教では重婚が認められています。その教義を基に法律を作っている国では、法律的に認められている国もあります。これは、当時戦で夫を亡くした未亡人を身請けするという意味がこめられているようで、「どの妻も分け隔てなく扱うこと」と定められています。

ドラマの舞台となっているユタ州でも重婚は禁止されています。そのため、仲の良い隣人と性的関係があり、妻もそれに理解がある。正妻以外の子供が生まれた場合の法的問題を双方が合意している。

これらがクリアされていれば、事実上の重婚状態が可能なのです。現に彼らはこうして法では守られていないものの、自分たちの文化・思想を体現することができるのです。日本でも可能ですね。

ショウでは、我々の知らない世界の苦楽を見せつけてくれます。内側から見る外の世界、外側から見るそうした彼らの姿。そうした目で見てみると、また違った側面を楽しむことが出来るかもしれません。

直球評価

・ちょっと登場人物が多すぎ・・・。
・そのためとにかくややこしいし、誰が誰かを覚える必要がある。
・重婚に対するある程度の理解が必要。
・男性からの視点、女性からの視点の双方から描かれている。
・ドラマ的には悪くない。
・複雑さがほどけて理解が出来れば十分楽しめる。
・テーマは重そうだが、それほど重くない。
・「ソプラノズ」の多重婚者版。


- スポンサードリンク -