ジ・オフィス (原題:the office)

とにかく寂しい上司

ダウンサイジングが決まったとあるオフィス。
そこを舞台に、人望の全くないボスであるデイヴィッド・ブレントの奮闘!?と、
彼と数名のアホな言動や振舞いに対する周囲の反応を描くドキュメンタリータッチのコメディ。

放映国: uk.gifイギリス
放送時間: 30分
ジャンル: コメディ
DVD発売: Season1~2, Special, コンプリートセット (US, UK, JP)
初放送: BBC2 2001~2003
初放送(JP): WOWOW 2005
全部観ました!

総合評価:☆☆☆☆
寂しさ:☆☆☆☆
万人ウケ度:☆☆


- スポンサードリンク -

モキュメンタリー

ぱっと見は、ドキュメンタリータッチで展開していきます。
登場人物たちは、時としてカメラを意識した振る舞いを行うので、演じているという感じが全くありません。
本当にドキュメンタリーショウを観ているかのようです。

振舞い、構成、そしてカメラワークもなんだかどこかに取材に出向いて取ったような感じでドラマっぽさはありません。
喋り方のせいもあるようで、役者っぽいしゃべり方ではなく、ごく普通っぽく喋ります。

また、ドラマなんかのように、交互に喋るのではなく、間髪入れずに話したり、同時に数人が話したり、オフィスの環境音が入ったりするので、ドキュメンタリーチックになっています。

とはいえ、これは脚本ありきの、いわばモキュメンタリー(偽物を意味するモック(Mock)とドキュメンタリーを掛け合わせた業界用語)にあたります。

使えないボスと、まともなはずの従業員

デイヴィッド・ブレント (as Ricky Gervais)は、製紙会社ワーンハムホッグのスラウ地域マネージャー。
会社のダウンサイジングにより、スラウ支店かスウィンドン支店のどちらかが閉じられることとなります。
人員削減も行われるということで、オフィス内は浮き足立ちます。

業績を上げて生き残りをかけて団結が必要となる時期ですが、デイヴィッドのオフィス内での人望は低く、まとまりそうにありません。
オフィスを笑いで満たそうとする彼のお下品なジョークは、ほとんどすべります。かなり、寒いです。奇妙な行動にも皆凍り付きます。

一番の問題は、デイヴィッド自身はいけてるマネージャーと思っていることです。
彼の秘かな夢はミュージシャンとして成功することです。

マネージャー補佐のガレス・キーナン (as Mackenzie Crook)も、デイヴィッドに負けず劣らずのアホマネージャーです。
営業担当のティム・カンタバリー (as Martin Freeman)に、常にしょうもないいたずらをけしかけて楽しんでいます。

概ねデイヴィッドのイエスマンで、仕切りたがりです。
でもデイヴィッドに抑えつけられていて、彼の目が届く範囲では中々仕切れません。
行動もいつも奇妙で、しばしばアホさを発揮して周囲を混乱の渦に巻き込んでしまいます。

ティムが秘かに思いを寄せるのが、受付のドーン・ティンズリー (as Lucy Davis)です。
全然かわいくないけど・・・。
奇妙な空気から逃れたいティムは、よく彼女とお喋りをしています。
彼の唯一のオアシスです。そこもデイヴィッドに侵されていきますが・・・。

ドーンもティムのことを良く思っていますが、倉庫で働いているリー (as Joel Beckett)という婚約者がすでにいます。
ドーンの態度もはっきりしないところがあり、ティムは振り回されます。

このラインが意外と上手く書けていて、ショウの中心の一つです。まあ、現実にもよくあることですな。
とっても仲の良い異性の友達vs.恋人な構図。

デイヴィッドの笑いを唯一共有できるのが、クリス・フィンチ(as Ralph Ineson)です。
いつも外に出ていて会うのはまれです。この人も何だかむかつくキャラですが、まだ社交性があって、周囲と上手くやれるようです。お下品さは変わらないんですけどね。

生き残らないといけないのですが・・・

デイヴィッドは管理職としての明かな哲学を持っていて、それを実行しますが、何か大切な物が欠けているようで、基本的には空振りに終わります。
うまくいっていても、不適切な言動一つで全てをぶちこわします。そういう才能にかけては天才的です。

デイヴィッドは頑張っていますが、ほとんど上手く機能せず、観ていてかわいそうになってきます。
観ているこちらが情けなくなってきます。
場は何とも言えない雰囲気に満たされ続けます。

そして、やり過ぎのいたずらにもついていけず、うんざりさせられてしまいます。

悲しき空気

すんごい面白いとは思わなくて、ほとんどが微妙な笑いになります。デイヴィッドの笑いはほとんど外れるので、そこは我慢の時間になります。
ブリティッシュコメディによくある、悪趣味で皮肉っぽい笑いが多いです。たまに爆笑させてくれることもあります。たまにね・・・。

シーズン2では、閉鎖が決まったスウィンドン支店から、人望の厚いのボス、ニール・ゴッドウィン (as Patrick Baladi)が彼の部下達を連れてやって来ます。
それ以来、ニールのまともさとの比較からか、デイヴィッドはますます外しまくりで、観ている方をますます苦しめてくれます。
ホントに笑えません。悲しいくらい・・・。

シーズン2終了後のクリスマススペシャルエピソード2話で、シリーズは完結します。

面白くないけど人気あり?

一応ドキュメンタリーということなので、オフィスの面々がカメラ目線になることが結構あります。
最初はカメラに視線が刺さっている感じがして、とても気になりました・・・。

面白いのですが、人に勧めると「悪趣味ー!!」なんて言われそうです。
シーズン1でもそうですが、シーズン2でのデイヴィッドの孤立振りを見ると、ちょっと勧めにくいです。

アメリカではこのオリジナル版が大ヒットし、2005年にアメリカ版を制作しました。
こちらもなんと大ヒット!
しかも、アメリカ版だけでなく、フランス版、カナダではフランス語版、ドイツ版、チリ版、イスラエル版と、次々と世界中でヒットしました。

普通に観ると、最初の1,2話で挫折してしまうでしょう。
忍耐が必要です。
人によっては全く面白さが理解できないと思われますし、実際に面白いのかと聞かれると、堂々と面白い!と言い切れないようなショウです。

メインテーマ曲は、ビッグ・ロジャース(Big Rodergs)の"Handbags & Gladrags"です。この曲、ロッド・スチュワートもカヴァーしてましたね。

雰囲気的視点

コメディショウというのは、笑いを目指すものです。が、これは真逆に突っ走ったショウと言えるでしょう。

そもそも、主役のデイヴィッドのやることに、周囲の人々および視聴者が共感できず、彼の考える笑いにも、誰もついていけません。
そこに残るのは奇妙な間と空気で、それが30分の間に何度も出てきます。

誰しも笑いを狙ったジョークを言って(聞いて)、それが通じなかった時の奇妙な空気を感じたことがあるでしょう。
言った側、聞いた側、どちらも非常に気まずいものです。
これを味わわせるのがこのショウの狙いです。

同様に奇妙なのが、ティムとドーンの間に流れる空気です。
これは様々な意味で非常に上手く作っていると思います。感心します。

リーという婚約者がいながら、ティムとドーンはお互いを気にかけています。
そこにリーが入ってくると2人の空気は一気に冷え込みます。
ティムに悪いと感じるドーンと、嫉妬を覚えるティム。非常に奇妙です。

また、ティムが他の女性に優しくしている姿に、ドーンは嫉妬してしまい、鋭い視線を投げかけます。
ティムはその視線を受け取ることはほとんどありません。
しかし、静かなる嫉妬でおかしな空気が流れます。
ここは思わず笑いが出てしまいます。

このラインの成功は、ティム役のマーティン・フリーマンと、ドーン役のルーシー・デイヴィスにかかっていて、2人の好演がこの微妙な雰囲気を上手く作り出していました。
特にドーン役はデイヴィッドの浮きぶりを表現する重要な役割でもあり、ショウ自体の鍵を握っていたと言えます。

結局はこの主役の3人のキャラがショウの大半を作っています。狙い通りになったとは思いますが、これがみんなに受けるかどうかは別です。

直球評価

・慣れが必要。
・楽しく笑うには時間がかかる。
・数名の変人度に唖然とする。
・いわゆる寒い空気が何度も流れる。
・笑えない空気を笑う、ちょっと難しいショウ。
・デイヴィッドになぜか同情してしまう。
・主役の3人はとにかく素晴らしい。
・人にお勧めするのに躊躇してしまう。
・ある意味やばい!!危険!!

- スポンサードリンク -