Profit
ジム・プロフィットは救世主か?それとも悪魔か?
ジム・プロフィットは巨大企業、グレーソン&グレーソンに潜入し、チャールズ・グレーソンの元で、人々を破滅に追い込んでいく。
警備主任のジョアンヌ・メルツァーは不信に思い、ジムの過去を探っていく。
プロフィットの目的は一体何なのか?
制作国: アメリカ
放送時間: 44分
ジャンル: ドラマ
DVD発売: コンプリート(US)
初放送: FOX 1996
初放送(JP): 未放送
DVD買って全話観ました。
総合評価:☆☆★
暗さ:☆☆☆☆
楽しさ:☆☆
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ジム・プロフィット (as Adrian Pasdar)は世界でも有数の巨大企業、グレーソン&グレーソンの一員で、心筋梗塞で死亡した前任者の後釜として、企業買収担当の副社長として抜擢されます。社内ではバリバリ働くので評価が高いようです。
しかし彼の素顔は、のし上がっていくためなら、脅迫、賄賂、強要、果ては殺人まで、あらゆる手段を尽くす恐ろしい男なのです。影で自分の前に立ちはだかる邪魔者を次々と社会的に、時には肉体的に抹殺していきます。
とはいえ、表面的にはそんな姿は見せず、運と実力に恵まれた優秀で気が利く出来る男なのです。プロデューサー曰く、"イルカのように愛嬌があり、人を引きつけるが、実はサメで、周囲を食い尽くしてしまう"なんて言っていました。
ゲイル・コナー (as Lisa Darr)は、ジムに脅されて悪事に手を染めてしまい、G&Gでの行き場を失いますが、役員となったジムの秘書として会社に居残ることが出来ます。ジムのそばでジムの恐ろしさを肌身に感じながらも、彼の手下として働くこととなります。
G&GのCEOはチャールズ・ヘンリー・グレーソン (as Keith Szarabajka)通称チャズ。プロフィットのことを将来性のある金の卵と思っています。ジムの裏の顔を感じつつも、業績を上げているのでそれほど気にとめていません。いざとなったらクビを切ればよいと考えています。
チャズの弟ピート (as Jack Gwaltney)は買収担当の上級副社長です。すなわちジムの上司。アルコール依存症で、チャズにとっては少し出来の悪い弟と映っているようです。ピートの妻ノラ (as (Allison Hossack)は、夫を信頼しながらも心には大きな寂しさを抱えています。
ただ一人、G&Gの警備主任ジョアンヌ・メルツァー (as Lisa Zane)は、ジムの異様な雰囲気に気づき、元買収担当副社長のジャック・ウォルターズ (as Scott Paulin)と共に、彼の周辺や過去について探り始めます。確信を持ち始めたと同時に、ジムもそれを察知し、水面下での戦いが始まります。
ジムは極めて特殊な幼少時代を過ごしていて、今もそのときの生活習慣がそのまま残っています。生まれた時はG&Gの製品の段ボール箱に入れられ、四角く切り取られたのぞき穴から見えるテレビを見続けていたとのことです。彼にとってはその穴こそが世界との接点だったのです。
今でも段ボール箱の中で眠り、四角い穴から外を覗いています。ショウでも毎回起き上がって段ボール箱から出てくるところから始まり、その回の最後には段ボールに戻って眠りにつきます。これちょっと面白いです。
彼の継母であるボビィ・スタコウスキ (as Lisa Blount)は、たびたび彼の前に現れては、周囲を騒がせます。継母といっても年齢はジムと同じくらいで、ジムの元恋人でもあるという複雑な関係です。
アルコールとヘロイン中毒で、非常にやっかいなママなのですが、手を焼きながらも、ジムはうまく扱います。
内容としては、企業内あるいは企業間の骨肉の争いを描いた頭脳ゲームです。かなりえげつない内容でありながら、あながち空想の世界とは言い切れない現実味に溢れています。
ジムは抜け目なく、非常に狡猾です。事前に十分な情報を集めて計画し、不測の事態にも十分備えているので、後れを取ることはまずありません。そうした状況下で、人々が実際にどう動くのか、いつも興味深く見守り、行動しています。
このショウは1995-1996年シーズンで、9月から放映され、17話でキャンセルされた「Strange Luck」の後釜として、4月から放映されました。よって、シーズン1は残りのスケジュールの8話分撮影されたわけですが、低視聴率のため、4話でこの世から姿を消してしまいました。
理由の一つとして挙げられるのが、若者向けであるFOXでこの内容。無理があります。少年漫画コーナーにビジネスマン向けの本を並べるようなものです。こうした放映局が対象としている視聴者と内容の不一致が短命に終わった非常に大きな要因の一つです。
最初に年配者を主なターゲットとしたCBSに持ち込んだそうなのですが、1話目のジムと継母ボビィのディープキスシーンを観て、"この男が主人公か?だったらもう帰ってくれ!"と断られてしまったとのことです。
もう一つが主人公ジム・プロフィットのキャラクタ性。これは各方面から批判を浴びたようで、まずは「スーツを着たサタン」と称され、保守的で敬虔なクリスチャンからは総スカンを食らってしまいます。やっていること、ほとんど違法ですしね・・・。
ビジネス界からも、大企業をアホ扱い、もしくは悪者扱いしていると喧嘩を売られ、スポンサーの機嫌を損ねるわけにはいかないため、姿を消してしまいます。
視聴率は全く取れない一方で、批評家からの評価は異常なほど高く、素晴らしいが不運なショウだとか、10年早すぎたのかもしれないなど、賞賛されているのです。
一言で言うなら、このショウ暗いんです。効果音で表すならば、ドーンとか、ズドーンって感じです。ジム自体が暗いですしね、画面も暗めですし、彼の声も暗いです。おまけに彼の過去もドラマの内容もね・・・暗すぎますよ。
ジムのサクセスストーリーという部分がありますが、彼の成功というのが、虚構や詐称と、他人の屍の上に成立していくので、観ていて楽しいとかワクワクした気分にはなれないのです。
とはいえ、ジムの目的はトップに君臨することではないようで、あくまで彼らを思うように操りたいというところのようです。そして、後半に徐々に明らかになるのは、幼少時代に全く触れることの出来なかった、家族というものを構築しようとしているのです。
これが判明するのがあまりにも遅すぎてね・・・。残念でした。
初めて観た時は、なんじゃこの暗いショウは?どこが面白いんじゃ?と疑問が噴出しましたが、それから5年後に再び観てみると、非常に味があって面白いと感じました。でも、毎週楽しみにしながら観たいって感じは全くないですねぇ。こういうショウもあってもいいな程度。
要するに、世間の人々は悪いやつが人を蹴落としてニヤリとするショウを喜んで見たいとは思わないわけです。それを納得させる隠された悲しい過去やいきさつ、手段を選ばずのし上がる理由を明確にし、人物像を描きあげて視聴者から共感を得るべきですね。
一話目に90分も使っておきながら、そうした暗闇の中の光のようなものが明確に示されなかったため、視聴者離れを起こしたのではないかと考えられます。もちろん離れるほどの視聴者数が最初からそれほどないんですけどね・・・。
主役であるジム・プロフィットをもっともっと魅力的に描き、撮ることができさえすれば、ショウがたったの4話でキャンセルされることはなかったでしょうね。もっと年寄りがじっくり観るようなチャンネル(HBOとか)時間帯であれば違った結果になったかもしれません。
DVDでは、撮影が終了していた4話分も含めた全8話が収録されています。また、制作者やキャストへの1時間超のインタビューも収録されています。
アメリカ社会的視点
わたしはそれほどこのショウを評価するわけではありませんが、非常にユニークであったという点では感心しています。上にも書きましたが、このショウの主人公ジム・プロフィットは、人を破滅に追い込み、それを踏み台にしてのし上がる、暗黒サクセスストーリーの道を歩んでいます。
アメリカ社会、いや、世界経済で行われている戦いの現実をうまく描いていると言っていいでしょう。その点については驚嘆しましたよ!
競争社会では、自らを切磋琢磨し、他人と競いながら階段を駆け上がっていく、これが正しい認識とされています。でも、相手の足をひきずって下ろせば、そんながむしゃらに階段を上る必要はありません。相手の弱みにつけ込み攻撃するのは、ビジネスの鉄則です。
その手段やどこまでやるかで評価は分かれますが、足の引っ張り合いは小さな会社の中でもあると思います。もちろん企業間や国家間でも。こうしたパワーゲームが溢れている社会というものを、しっかりと描いていると言えるのです。
それを最も顕著に行っているのが、アメリカの企業であり、アメリカという国家です。これは誰も否定しないでしょう。彼らは他人を踏みつけてでもNo.1を目指し、実際その座に君臨しています。しかしこれには大きな落とし穴があります。
こうして手にして虚空の成功は、まさに空しいものであり、人を幸せにはしないということです。アメリカに行けば幸せになれるなんて、今時誰も思っちゃいません。
中米の人たちは、国がアメリカに完全に潰されているため、ここよりましと故郷を捨ててアメリカを目指しますが、実際にアメリカで仕事をして、母国よりも何倍ものお金を手に入れたとしても、幸せな生活とは言えないでしょう。比較してマシになったかもしれませんけどね。
また、成功者とか富豪とか言われるお金持ちにしても、決して満たされているという感じは受けません。彼らと手て、いつ誰かから引きずり下ろされるか、常に不安を抱えているはずです。そして、多くの犠牲の上に立っているに過ぎないのです。
こうした現代社会や、そこにおける企業のあり方に対して強烈な疑問を投げかけたのです。タイトルの「PROFIT」は、「利益」という意味でもあります。利益のためなら、それが道徳的か否か、合法か違法かも気にせず、誰が不幸になろうとも構わないのです。
グレーソン&グレーソンはそもそも家族企業ですから、最後は企業の利益ではなく、家族の利益のためなら・・・にオチを求めていたんですけどね。ただの強欲企業のお話になってしまいました・・・。
直球評価
・とにかく暗い。
・とにかく非道。えげつない。
・応援できないけど応援してしまうパターン。
・もっと過去と現在を結ぶ線を明確にしてほしい。
・それでもそこそこ面白い。
・継母ボビィはいい味が出ています。出て来るとイラッとする。
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